Dwango Media Villageの佐々木と横島が、2月にニューヨークで開かれた国際会議 AAAI2020 を聴講してきました。この記事では我々が聴講した研究発表内容のダイジェストと共に学会イベントの様子を紹介したいと思います。
AAAI2020はアメリカ人工知能学会(Association for the Advancement of Artificial Intelligence: AAAI)が開催する国際会議です。人工知能研究では代表的な国際会議であり、今回のニューヨークでのAAAI2020では8,000弱の論文投稿と4,000人以上の参加者があったとのことです。新型コロナウイルスの影響により残念ながら参加できない方も多くいたそうですが、それでも会場であるHilton Hotelには多くの学生や研究者の方がいました。
特に盛況だったのは今回のメインイベントである2018年チューリング賞受賞者であるYoshua Bengio先生、Geoffrey E. Hinton先生、Yann LeCun先生による講演です。この3人は昨今の深層学習の発展に大きく寄与したことで有名です。Bengio先生は現在の深層学習を無意識的かつ直感的なシステムであると捉えた上で、より意識的で長期的で論理的な思考をするシステムへと向かうべきだという話をしていました。Hinton先生は部品の相対的な関係などの特徴量の空間情報を保持するような画像のためのモデルCapsule Networkの紹介をしていました。これは現在、画像認識生成で使われているConvolutional Neural Networkは持たない人間の視覚機能に焦点を当てたモデル化であるとも言えます。LeCun先生は深層学習が得意とする教師あり学習に対して、学習データそのもののダイナミクスをモデリングするSelf-supervised Learningについて言及していました。基本的な強化学習はエージェントの振る舞いの良さの教師信号として報酬が与えられますが、この情報は非常に限られたものです。これに対してSelf-supervised Learningでは未来のデータを予測することを通じてより豊富な教師信号を得ることができます。これら3人の先生の講演やパネルディスカッションを通じて感じたのは、人間の知能に学ぼうという姿勢です。現在の深層学習が実現できている機能はあくまで限られたもので、意識や視覚、意思決定を含めた人間の知能にみられる特徴的な機能はまだこれから、という印象でした。
佐々木(kzmssk)と横島(ninhydrin)がそれぞれ聴講した研究発表の内、面白いと思ったものをピックアップしてスライドにまとめました。前者は強化学習やゲームAI、後者はComputer Visionを中心とした内容になっています。
この記事で紹介したもの以外にもたくさんの興味深い研究がありました。AAAI2020ではポスターを含めてAcceptされた論文の数を数えてみたところ1500以上あり、セッションも多岐にわたっていました。人工知能研究は様々な分野を含んでいますが、今回はまさにそのことを改めて実感しました。来年の会議も楽しみです。